レーザスキャナによる地形観察

 国土地理院は、平成15年8月22日から9月30日の間、三宅島の航空レーザスキャナデータを取得しました。
 航空レーザ測量とは、航空機(セスナ・ヘリコプター等)に搭載したレーザスキャナから地上にレーザパルスを照射し、地上から反射するレーザとの時間差より得られる地上までの距離と、GPS測量機、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)から得られる航空機の位置を合成した三次元計測により、精密な標高データや地形、地物の形状を求める新しい測量方法です。
 航空レーザ測量では、一般に、植生や地物の状況により地上にレーザが到達する密度が異なります。しかし、裸地の多い部分や、レーザが透過しやすい状況の部分では、非常に精度の良い標高値を得ることができます。

 計測した標高データから、地表面を遮蔽する家屋、道路・鉄道の高架部及び橋梁等の人工構造物や樹木等の植生をフィルタリング処理等により除去したデータを基に、1m間隔に内挿補間計算をしたDEMデータが得られています。
 また、レーザスキャナ計測と同時に、デジタルカメラによる三宅島の画像取得も行っています。
 このページでは、三宅島の平成15年航空レーザスキャナデータから作成した1mグリッドDEMデータから、陰影図を作成し、平成12年の空中写真判読で作成された災害現況図のデータや、デジタルカメラによる画像と対比しながら、レーザスキャナデータによって観察できることを紹介します。

小さな火口・火口列状の地形(三宅村営牧場付近)

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災害現況図
図:空中写真判読による地形分類図(JPG:129KB)
レーザスキャナ陰影図
図:レーザスキャナ計測結果から作成された陰影図(JPG:111KB)
デジタルカメラ画像
図:デジタルカメラによるオルソ画像(JPG:107KB)

 レーザスキャナデータの陰影図から、小さな火口・火口列と思われる地形を観察することができます(赤い矢印)。これらは、デジタルカメラの画像から分かるように、植生に覆われており、知られていなかったものです。このような、空中写真等では見えなかった小さな火口状地形は、他の地域でも見つかっています。

溶岩流の微地形(1983年噴火の火口列)

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災害現況図
図:空中写真判読による地形分類図(JPG:140KB)
レーザスキャナ陰影図
図:レーザスキャナ計測結果から作成された陰影図(JPG:99KB)
デジタルカメラ画像
図:デジタルカメラによるオルソ画像(JPG:98KB)

 ここでクローズアップされるエリアは、1983年噴火の際の火口列付近です。レーザスキャナの陰影図をよく観察すると、火口列から流れ出した溶岩流と、溶岩流表面の微地形(溶岩皺・溶岩堤防)が見えます。デジタルカメラの画像で植生に覆われているところでも、レーザスキャナ陰影図では、一つ一つの火口が小さなものも含めてくっきりと見える様子が分かります。

山頂火口

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レーザスキャナ陰影図 
図:レーザスキャナ計測結果から作成された陰影図(JPG:123KB)

 この画像は、災害現況図作成当時(空中写真は平成12年)の山頂火口の火口縁と、平成15年のレーザスキャナデータ陰影図から判読できる最近の火口縁を、陰影図に重ねて表示したものです。この3年間で、火口が少し拡大している様子が分かります。最大で、約75m拡大しています。また、山頂火口の中の、噴煙に覆われて見えなかった部分(判読困難域)には、火口が存在することが分かります。



三宅島レーザスキャナデータ・デジタルカメラ画像の問い合わせ先
地理調査部防災地理火山調査係
電話:029-864-5907(直通)